2007.9.12 社会人1年目
朝一番初めのおはようは 君と交わす。 それだけで胸がいっぱいだ。僕と同期の彼女は、 中途採用ながら、総務部でバリバリと働いている。 同期の中で一番仕事ができるんじゃないかと思うぐらいだ。
恋におちたら
彼女はとても謙虚で、 笑顔が愛らしい。 同期会では同期らしく、それなりに振る舞うけれども、 会社では礼儀正しく、とても丁寧な対応が皆に好評だ。
そんな彼女が最近気になって仕方がない。 間違いない、これは恋だ。 恋してしまった。
恋
ああ、なんて恥ずかしい言葉なんだろう。それは何度も僕の中に訪れて、 その度に僕を悩ませてきた。悩み抜いた末に出した行動は すべて裏目に出てしまい、 何度も心を痛めたものだ。
きっと、今回もそうなんだろう。 僕は想いを告げられぬか、 想いを悟られて避けられてしまう運命なんだろう。そう思うと、 とても気分が沈んでくる。 仕事もやる気が起きない。
…
不遜な
沈んだまま、昼休みが訪れた。 いつもと同じ時間。 いつもと同じ顔で必要以上に明るい奴が現れた。
「これ、例の物です。」
彼は紙袋を僕に手渡し、 悪戯っぽく微笑んだ。
「パンプキンは最高ですよ。」
そう告げると彼は去った。 給茶器に水を汲みに行ったらしい。
袋を開けると、 鎌倉の老舗洋菓子店ニュージャーマンの美味しいお菓子、 『かまくらカスター』が10個入っていた。
どういう話の展開か忘れたが、 僕は彼にこれを買ってくるよう頼んだようだ。しかし、何故に10個も?経緯を思い出そうとしばし思案していたら、 彼が戻ってきた。
「何やってんすか、早く渡しに行けばいいじゃないですか。」
言いながら、彼は受付の方に僕を押し出した。
思い出した
先日、彼と飲みに行ったときに、僕はうっかり、 彼女への恋慕を彼に打ち明けてしまったのだった。
それでどういう運びか、 彼がお菓子を買ってくることになり、 僕はそのお菓子を種に彼女を遊びに誘おうという算段になったのだった。
しかし、 心の準備が出来ていない…。
「きょ、今日は止めておこう…。」
と言うと、彼は予想通りと言ったような顔をして、 僕を説得にかかった。
これだ
この間もこの語り口にいつのまにか乗せられ、 こういう展開になってしまったのだ。
彼は新人のくせに口が達者で、 それでいて、人を乗せるのが上手い。 ほかの人からも「気づけば気分良く奢らされていた」と言う話をよく聞く。 かくいう僕も、相当な額を奢らされている。
さて、気づくと僕は 受付の…彼女の前にいた。
ここからの話は また彼に飲み屋で話すことにする。
考察
果たして日持ちしないかまくらカスターで誘えるのだろうか…しかも10個…。今だったら福砂屋のキューブカステラを提案するでしょうね。
このお話のネタバレ編が明日アップされると思いますので、お楽しみに?