結婚することも育休をとることも夢にも思わなかったあの頃

大学時代に書いていたブログ記事をリマスター及び考察しながら載せていこうと思います。恥ずかしい思い出や今より稚拙な表現等ございますが、ご容赦ください。

ラッシュライフ / 伊坂幸太郎 著

 

 

書評日:2006.8.15(火)

 

 

 

ラッシュライフ

 

金で買えないものはないと体現する戸田。泥棒を生業とする黒澤。再就職先が見つからない失業者、豊田。不倫成就のためにお互いの配偶者を亡きものにしようと計画する京子。神と崇められる宗教団体の男に憧れる河原崎。それぞれの生活が時に交錯し、すれ違う人生群像。彼らの未来にあるものとは!?

 

伊坂幸太郎氏の2作目。様々な意味を持つラッシュ。lash lush rash rushに係る a life

 

たくさんの登場人物がでてくることから、恩田陸著のドミノを連想したが、その時点で僕は騙されていたのです。答えは最初から提示されていたのに。みすみす見過ごしてしまう、驚くべき小説。

 

たくさんの登場人物が出てくる物語というものは、作中の場面で繋がって全員集合するものというものが頭にあったんです。だから、各々の物語がどこで交わるのか、予想しながら物語を読んでいたのですが…。

 

どうにもこうにも全員集合になんてなりそうにないんです。気づくともうページもなくて、どうなるの?そして待ちかまえるのは全く予想がつかない展開とエンディング。

 

僕はエピソードと主観人物全員が出会う人物に騙されていたんだろうなぁ。。最終章に至るまでに感じていた違和感が説明されたとき、すっきりしたような、悔しいような、複雑な気持ちでした。まさか、そういった騙され方をするとは思っていなかったもので。

 

前作よりも読みやすさを重視して作品を書かれたようで、ページはサクサク進むんですよね。だからといって、作者が変わったようにという形容は相応しくなく、読んでみれば分かる、伊坂らしさは相変わらずでした。

 

全作オーデュボンの祈りの純文学の香りをのこしつつ、大衆文学の読みやすさへ書き方をシフトさせて書いたのかなぁ。

 

どうやら伊坂作品では登場人物や設定がリンクするらしく、前作オーデュボンの祈りの伊藤が作中人物の話の中に出てきたり、喋るカカシの話が出てきたり、思わずニヤリとしてしまう演出がなされておりました。

 

他の作品も繋がってるのであろうと考えると読みたくなっちゃうじゃないですか。自分の作品に引き込むのが上手いなぁ。

 

ラッシュライフ。僕がこの作品を読んで感じたこの言葉の意味は作中に登場する「豊潤な人生」です。

 

きっと読む人によってこの言葉の持つ意味が変わってくるのではないかと思います。そんな不思議な物語です。

 

考察

「オーデュボンの祈り」より遥かに読みやすかったという印象だけが残っている作品です。当時の私がどんな騙され方をしたのか、ちょっと興味が湧いてきました。伊坂さんの昔の作品を読み直すいい契機なのかもしれないですね。