結婚することも育休をとることも夢にも思わなかったあの頃

大学時代に書いていたブログ記事をリマスター及び考察しながら載せていこうと思います。恥ずかしい思い出や今より稚拙な表現等ございますが、ご容赦ください。

ささらさや/加納朋子 著

書評日:2006.5.6(土)

 

ささらさや

突然の事故で最愛の夫を失った、ある女性と小さな子供のお話。亡き夫は妻「サヤ」や赤ん坊の「ユウ坊」に関わりのある「事件」が起こったとき、他人の体を借りてサヤの元に駆けつける。サヤとユウ坊の成長が綴られた連作ミステリ小説。テレビ朝日金曜ナイトドラマの原作「てるてるあした」の姉妹作。

 

最初から終わりが見える小説。絶対最後は寂しくなるってわかってるのに読んでしまう系。登場人物も悪人善人がはっきりしていてわかりやすく、読みやすい小説です。

 

ありきたりな展開ながら、加納さん特有の書き方で日常に溢れた出来事をミステリーにし、先が気になる「面白さ」を持っています。

 

日常をほのぼのと綴りながらも、時に悲しみや怒りと言った感情で彩りを加え、リズムをつけているのは流石です。

 

個人的には亡くなった夫の視点から書かれる序章、「トランジット・パッセンジャー」と、終章「トワイライト・メッセンジャー」が好きです。

 

先に亡くなってしまった人間の心の悲しみが、ユーモアたっぷりに書かれていて吹き出してしまうのですが、辛さがありありと伝わってきます。

 

何よりつらいのは一番傍にいて、ずっと一緒に過ごしていくはずだったのに、不条理にも見ていることしかできなくなってしまったこと。なにもしてあげられなくなってしまったこと。ずっと泣いている「サヤ」よりも亡き夫の方が遙かに悲しいんだなぁと感じました。終章では夫の決意に泣けます。

 

章ごとに話が区切られているのでちょっとした時間に1章1章読んでいけます。読みやすく、不思議なミステリーを探している方は読んでみてはいかがでしょう?

 

考察

てるてるあした」「はるひのの、はる」につづく三部作の第一作目です。当時も読んでて辛かったですし、父になった今は読み返したくない作品です。希望はあるのですが、設定が悲しすぎる。とてもいい作品ではあるのですが。分かっていても読みたくない作品です。考えたって仕方のない「たられば」を考えてしまいそうで。

 

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今知ったのですが、2014年に映画化されていたんですね。知らなかった。