書評日:2006.8.10(木)
レベル7
「明日 レベル7まで行ってみる 戻れない?」そう書き残し、少女は消えた。消えた少女「みさお」と面識のある、電話相談所のカウンセラー悦子は、少ない手がかりを元に調査に乗り出す。
時を同じくして、東京のマンションで男女が自分の名前と記憶の一部をなくして目覚める。部屋の中から拳銃や大金が見つかり動転するが、自分は何者なのかを調べ始める。
宮部みゆき氏の長編小説。表紙と題名からSFチックな物語を期待していたのですが、SF的な要素はありませんでした。予想していたものと違っていましたが、面白かったです。
スーパーファミコン系のRPG感覚で進むファンタジーストーリーではないけれど、フェイズフェイズで手がかり(アイテム)が見つかり、次は「何処で何をするか、目的は何か」が明確になってくる。
記憶を辿る旅と捜索行が交錯していく様が必然的で、違和感なく繋がるのでおもしろいです。長編だと、途中で展開の強引さや不自然さを一度感じてしまうと呆れてしまって、その後の長いページを読むのが辛くなります。それが無く、ページ数関係無しに読み進められたのがよかったです。
いい長編は飽きさせず、だれもせず、残りのページ数を感じさせないものです。
少々肩すかしを喰らったのは、「レベル7」でしょうか。キーワードの一つで、「みさお」の失踪に大いに関わってくるものなのだけれど、そうだったのか!という驚きが得られませんでした。そこは、期待してたものと全然違ったっていうのもあるのだと思いますが…。
謎解き部分では騙されました。最後、どうなるのかが分かりませんでしたから。「そう持っていくか」と思わず唸ってしまうラストの展開、極限状態だと、見えないものなのですかね?
自分とはなにか?というテーマがこの作品にはあると思います。
「読む本読む本、そういうのに当たるなぁ」なんて思いながら読んでましたが、答えは全然でないもので、だからこそ様々な人がテーマにするものなのですよね。
レベル7まで行ってみる?
考察
かなりの長編だった記憶と、「レベル7」って…!?と思った記憶があります。もうちょっとひねりのある者だと思ったら、ストレートでそういうわけかと肩透かしを食らいつつ、物語としては楽しめた思い出が残っています。もう一度読み直したいかと問われれば「否」と答えますが…。
1990年に発行された作品で、1994年と2012年にドラマ化しているんですね。どちらも存在を知りませんでした。