結婚することも育休をとることも夢にも思わなかったあの頃

大学時代に書いていたブログ記事をリマスター及び考察しながら載せていこうと思います。恥ずかしい思い出や今より稚拙な表現等ございますが、ご容赦ください。

人質カノン/宮部みゆき 著

書評日:2006.7.10(月)

 

 

 

人質カノン

1993年から1995年に書かれた7つの作品が集録された、宮部みゆき氏の短編集。当時の社会を背景においた個性豊かな短編が並んでいる。

 

宮部みゆき氏の作品を初めて読みました。宮部氏は大長編を書くイメージがあって、家にたくさん本があるものの、読む気になかなかならなかったのですが、ちょうどいいこの短編集を見つけたので先日読んでみました。

 

この短編集に集録されている物語は展開はなんとなく分かるけど、読み進まないと分からない系のミステリーでした。引き寄せ方が自然でいい感じです。

 

女性の優しい文体で書かれていくストーリーは時に優しく、時に寂しくもあり、バランスがとれていて読後感がとってもいい感じです。

 

作品には当時から通づる10代の少年の問題を取り入れた物語が多数収録されており、それらは、最終的に立ち直る(もしくは軌道修正する)きっかけをつかむ内容のものになっております。

 

若さというエネルギーを持ちながら何かきっかけがないと立ち直れない若者達の描き方、変化の過程はとても痛快で面白かったです。

 

収録作品の感想 

特に面白かった作品を二つ紹介。

 

八月の雪

ある事件をきっかけに体に傷害を負い、家にこもりきりの生活を続ける中学生の物語。

「いじめる側の人間といじめられる側の人間の不公平さ」を題材にした物語。

 

いじめる側は「いじめ」をどうとでも捉えて、笑い話にすることができるけれども、いじめられる側は「いじめ」はそれ以外のなにものでもなく、その事実を訴えれても訴えなくても、事態は悪化していく負のスパイラルに陥ってしまうんです。

 

数的優位もあっていじめる側は、みんなでどうとでも話を作れる。いじめられたくない他の人にも抑止力がかかる。

 

一度いじめられる側になったら、負のスパイラルを駆け下りるしかないのです。誰も、いじめられたくないと思っているから、止められない。いじめる方が楽だから。

 

そんなことを主人公を通じて考えてました。

 

2・26事件の話も出てきていて宮部さんの長編「蒲生邸事件」を読んでみたくなりました。

 

生者の特権

学校を舞台にしたちょっぴり恐いお話。最期の場所にふさわしい建物をを探し求めて、夜道を歩いていた主人公の明子は、通りかかった学校に潜入しようとした人影を見つけて思わず声をかける。

 

その人影はその学校に通う気の弱そうな小学生。彼はクラスの大将格の生徒が提案した罰ゲームによって、深夜の学校に潜入し宿題をとりにいかなくてはならなくなった。

 

偶然出会った二人に、その夜小さな奇跡が起こる。

 

二人と一緒に学校探検している気分になれました。緊迫した場面では、思わず冷や汗が出てきましたし。改めて夜の学校の恐さを思い出しました。

 

展開のテンポも良くて、ラストもいい終わり方をしていたので、7つある作品の中でも一番読んで良かったなと思えた話です。

 

おわりに 

次は宮部さんの長編に手を出してみたいと思います。レベル7か蒲生的事件。

 

考察

全然内容を覚えておりませんでした。この頃は就職活動も終わり、就職に向けて「なにか」を頑張らねばなるまい!と意気込んでいて、1日1冊をとにかく読み「多読」の癖をつけようと思っていた頃でした。ゆえに、あまり内容は入っていないのでは?と思っていたのですが、割としっかり感想を書けてますよね。素晴らしいな!(笑)