書評日:2006.11.27(月)
火車
怪我の療養の為、休職中の刑事である本間俊介は、遠い親戚から「失踪した婚約相手を探して欲しい」と頼まれる。調べが進む事に単なる失踪ではないことがわかりはじめ…。山本周五郎賞受賞作。
携帯電話が普及していない時代の傑作ミステリー。グレーゾーン金利やクレジットカードの社会問題についても言及しており、また、高校時代の担任の名字の由来も判明し、単なる推理もので終わらなかった作品。
物語は失踪した女性を捜すために知人や、勤め先などを尋ね、新たな情報を得てその新たな情報を元に、人や会社に尋ねていく事を繰り返す。
新たな情報が入るごとに、これまでの「おさらい」をするので頭がこんがらがることなく、読み進めていける。(そのため、物語のテンポは少し遅い。)
本間の性格が本全体を構成しているかのように、手堅く、ひとつひとつを見直しながら徐々に真相に迫っていく。時に鳥肌、寒気を感じさせる物語の展開もすばらしい。
この作品は、「これしかない」終わり方をする。完璧に誂えられた最後のピース。読後に思わず唸ってしまった。
- 作品をきちんと終わらせること
- 読者に考える部分を与えること
どちらも完璧にできている作品だ。
人と人の繋がりや感情が、文章からひしひしとつたわり、携帯電話が普及していない時代の捜査がものすごく新鮮に感じた。
長期戦覚悟で読み進めてみてください。
考察
ミステリーとしてはよくできた話だと思いましたが、ちょっと古臭く感じてしまってそこまでのめりこんだ記憶が無かった作品でしたが、それを「新鮮」で言い換えているあたりがさすがだと思います(こういうところが教授的にはいけ好かなかったんだろうなと)。
確か、お金に関する悲惨な話がたくさん出てきた気がしますが、幸いなことに私はあまりそういったもので苦しまずに来ています。金融リテラシーというのでしょうか、そういったものを20代のうちから形成出来てきて良かったなと思っています。
ただ、ここらへんの話って「タブー」にされがちで、そういった話こそ知りたい私と、したがらない周りとで、温度差ができてなんだか人と話が合わなくなったなと感じたのも、金融リテラシーを身につけ始めてからだった気がします。
単に私が嫌われているだけなのか、めんどくさいだけなのか、私がものすごくつまらない話をしているのかのどれかだと思うのですが…。
話が逸れましたが、本編についての記憶が薄いのでこの辺で。