結婚することも育休をとることも夢にも思わなかったあの頃

大学時代に書いていたブログ記事をリマスター及び考察しながら載せていこうと思います。恥ずかしい思い出や今より稚拙な表現等ございますが、ご容赦ください。

ねじの回転―FEBRUARY MOMENT / 恩田陸 著

 

書評日:2006.2.26(日)

 

 

 

ねじの回転

近未来。時間遡行装置の発明により、過去に介入した国連のお話。国連は「過去の時間」に介入することによって発生した問題を解決するために、過去の修復ポイントを定め、歴史を「正しい」方向でやり直すことになった。その介入ポイントに「1936年2月26日、東京」が指定された。史実で言う「二・二六事件」の日である。

 

ちょうど70年前の今日、二・二六事件が発生しました。本日、この本を紹介すること作為的。

文庫購入は昨年出たばっかりの時。読み終わったのは今日の午前中。作為的。

文庫は今月出せばセールス的に伸びた気がするんですけどね。

 

 本作品、題材は「SF」ですが、ジャンルはファンタジーで括れるんじゃないのでしょうか。SF的な知識は必要ありません。SFで敬遠してしまうにはもったいない作品です。

 

矛盾に感じることがたびたび起こるので、頭がこんがらがってくる人もいると思いますが、解決する場面が要所要所で出てくるので、謎を持ちつつストレスを極力感じさせない作品になっていると思います。

 

マトリックスGANTZを楽しめた人はこの作品も楽しめると思います。

 

非現実の描写を日常的に使われる言葉を用いてごく自然に表現されています。

「再生」「不一致」「つまむ」など

 

非現実の世界を覗いているのにそこにある「リアルさ」によって、物語にどんどん引き込まれていき、僕の頭の中で映像が「再生」されていきました。

 

この作品。「映画にしてもいいんじゃないか?」と思えるほどに映画向きの構成なのです。映画化されたら見てみたいわ。

 

また、「石原莞爾」をはじめ、実在した登場人物を登場させていることが、物語をさらに「リアル」に感じさせている要因だと思います。

 

「存在した」

 

ということだけではなくて会話までさせちゃうんですからね。

 

恩田作品は終わらせ方に不満が残ると批判を受けることが多いので、この作品でもそうなってしまうのかな?と感じられる場面があったのですが、うまく切り返して途中で投げることなくラストまで持っていけたようです。そのおかげで読後感がとってもよかった。

 

とっても面白い作品です。二・二六事件について知らなかった人は読んでみると歴史についても学べてストーリーも楽しめて一石二鳥かもしれませんよ!

 

考察

書読時は恥ずかしながら、二・二六事件についてはその名前しか知りませんでした。そして、読んだ時もその「重み」について深く考えることはせず、あくまでフィクションとして楽しめた気がします。

 

年を重ねて感じることは、歴史に纏わる人の業の深さに対して「重み」を伴う苦しみがあるということです。歴史は繰り返すと言いますが、何度同じことを繰り返しても飽き足らない人間に対して諦めというか、また同じ目に遭うことになるのだろうという感情に支配されるのです。歴史ものや歴史フィクションを読むと。

 

それはやはり勝者の歴史だから「綺麗に」書かれていることが関係していて、若い頃は綺麗なものを綺麗なまま読めていたのが、年を取ると綺麗さの裏側を読み取るように意識せずともなってきた気がします。

 

ゆえに、今本作を読んだらまた違う感想を持つのでしょうが、読む気になれないというのが正直なところです。