結婚することも育休をとることも夢にも思わなかったあの頃

大学時代に書いていたブログ記事をリマスター及び考察しながら載せていこうと思います。恥ずかしい思い出や今より稚拙な表現等ございますが、ご容赦ください。

ライオンハート/恩田陸 著

書評日:2006.11.19(日)

 

 

ライオンハート

ロバート・ネイサンの「ジェニーの肖像」のオマージュ作品。時間を超えて何度も巡り会う男女を描いた美しいラブストーリー。

 

題名から、SM●Pの曲を思い出してしまうことから、読むのを敬遠していた作品。(実際はケイト・ブッシュの曲からとられたものであったが。)

 

結ばれない二人が転生を繰り返し、最後に漸く結ばれるという作品はたくさんあるが、この作品は転生するのが来世ではなく、前世に遡る。

 

また、同じ事の繰り返しで単調にならないように、二人の邂逅とは別の主題を設ける章もあり、(関係はあるのだが)飽きさせない展開になっている。

 

この二人が何度も転生する必然性や転生の仕掛けなどは解決しないし、最初の謎も謎のまま終わるし、解決させなくともこういった話は面白いのである。恩田作品らしさが上手く生きております。

 

1章1章の長さのちょうど良さがとても心地よい、作者のスタンスと物語が上手く重なり合った秀作です。

 

考察

北村薫氏の『リセット』など、転生をテーマにした作品は枚挙に暇がありませんから、恩田陸氏の作品の中で一番読むのを躊躇した作品だったと記憶しています。最後はハッピーエンドになるだろうけど、途中のすれ違いがきっと辛いのだろうと思って。

 

でも、読み始めると止まらないのがこういった作品の魅力なのでしょうか?やめられないとまらない…。