書評日:2006.11.27(月)
木曜組曲
作家、重松時子が亡くなった後、毎年同じ時期に時子の家「うぐいす館」で時子を偲ぶ会が開かれ、時子と「縁」がある5人の女性が集まっていた。時子が亡くなってから4年後、薬物自殺と言われる時子の死の真相を探る試みが行われ…。。映画原作。
恩田陸という作家に対し、自分は間違った認識をしていたのではないか。
最近、彼女の作品を読む度に思っていた。恩田氏=結末破綻作家というイメージで、これまで作品を読んできたが、この作品を読み終え、それは間違った認識であると確信した。
おそらく、「球形の季節」の終わり方や「不安な童話」や「劫尽童女」、「MAZE」などの「ここまでやっておいて!!」(必死のネタバレ防止)で想像以上に傷つけられたのだと思う。ものすごく設定の面白い作品に出会い、その真相や構造について読み解きたいと思える作品に出会えたのに、真相は闇の中に葬られ?うやむやのままに終わらされてしまったこと。それが想像以上に自分の読書心を傷つけられ、
もう、恩田氏には期待しない!!
と、勝手に結末破綻作家にして、自分の読書プライドを保っていたのだと思う。
そのくせ結局作品を読んでしまうのは好きな子に対して冷たい態度を取ってしまうのに似ている。「破綻しているから期待してないもんね」と表面上で作品に投げかけてはいるものの、心の奥では「今度はどんな恩田マジックが!?」とワクワクし、しっかり楽しんでいる。
でも、最初のイメージはなかなか修正ができないから、ずっと、筋が通ってないとかなんくせをつけて変に最初のイメージを保っていたのだろう。
本日は、その認識が変わったことを宣言する。
恩田氏の作品はそれなりの形で終わっている。(結局それなりかい!!というツッコミはナシで)
この作品に出てくる女性達は、恩田氏の持つ空気の中でくつろいでいるように感じる。登場人物のくつろぎ加減が心地よく、彼女たちが醸し出すほどよい文学の香りが鼻を擽る。
それぞれが疑惑・謎・不信を抱きながらも、バランスを保ち終結していくさまは非常に女性的な感じがする。男性が出ないことで凝りすぎることなく恩田氏の女性らしさを解放できたという印象を受ける。
長さも内容もちょうどいい作品です。恩田作品に興味を持たれた方は是非ご一読を。
考察
つい最近、文庫の新装版が出ていたんですね。この作品は恩田作品の割には、とてもよくまとまっていた印象があります。映画化もされていましたよね。
気になって映画版も見たのですが、なかなかいい作品だった覚えがあります。小説版の方が好きですけど。
後日談となりますが、何度目かの「もう恩田氏には期待しない!」の後、恩田作品を読むのをやめてしまいました。少し落ち着いたらまた読んでみようかな…。