書評日:2006.9.4(月)
蛇行する川のほとり
ある夏休み。少女達は川のほとりにある家で、演劇祭に向けて舞台背景の絵を作り上げようとしていた。それぞれのヴェールに包まれた少女達の、儚い美しさを描いた作品
著者は少女漫画のような小説を書きたかったらしく、(あくまで少女漫画を小説で書くというわけではないらしい)それらしい美しさを全面に打ち出した意欲作。
お姉さまみたいなセリフ回しはないけれど、美しい登場人物、てんこもり。
ミステリーよりも美しさを全面に打ち出した作品。著者は書いていきながら作品を作っていったらしく、読み方を絞らないと結構困る。よく言えば先が読めない展開。悪くいえばどうとでもなる展開。
最初はオカルト要素を含んだ主人公と思しきに対する陰湿ないじめの話かと思いきや、実は主人公が定められていなくて、3人の視点から語られる物語。
3人か4人の視点から語らせる物語って恩田さんの作品に多いのだが、毎回、主観キャラになるとイメージをぶちこわされる。恩田さんはそれを狙っているらしいのだが。
それがうまくいくときもあれば、うまくいかないときもある。
この物語ではどうかと問われればうまくいっていない気がする。2番目の語り手になる人物が、主観と客観で行動がかなり違う気がするのだ。
この人物の語りによってかなり物語が安定するのだが、行動が変わってしまうと感じてしまうのはどうしたものか、うーむ。
女の人はよくわからない(笑)
多分そういう「女性」という男にとって訳の分からない生き物の成熟前の「少女」を書きたかったのだろうが。
ざっと読んでみると、よく分からない物語で微妙な謎を解いただけのものとして片づけられてしまうのだけれど、独特の匂いが感じられる作品。少女のヴェールは汚れたものには破ることはできないのである。
考察
昔は男性作家より女性作家の書く登場人物の方が共感すると思い込んでいたのですが、とんだ思い違いでした。私は非常に男性的な性格をしていることに、後年になって気づきました。乙女心なんてわかっちゃいなかったのです。
そんなことを気づかせてくれるきっかけをくれた作品だったと思います。内容、よく覚えていないんですけど、読んで受けた印象だけは覚えているという不思議な物語でした。