結婚することも育休をとることも夢にも思わなかったあの頃

大学時代に書いていたブログ記事をリマスター及び考察しながら載せていこうと思います。恥ずかしい思い出や今より稚拙な表現等ございますが、ご容赦ください。

黒と茶の幻想 / 恩田陸 著

書評日:2006.8.16(水)

 

 

 

黒と茶の幻想

大学時代、同級生だった利枝子、彰彦、蒔生、節子の4人は、卒業から十数年経った後の同窓会を機に、Y島への旅を計画する。森を歩き、美しい謎を語り合う4人。その心の中でそれぞれが考えていたこととは?やがて話題は「梶原憂理」という名の女性の話になり…。。

 

恩田陸の著書、三月は深き紅の淵をに出てくる本の第一章の構想を物語にした長編。麦の海に沈む果実に出てくる梶原憂理の話が登場するところで恩田ファンはかなりの興味をそそられるに違いない。

 

恩田陸の王道作風で4人の主人公それぞれに語らせていく物語は、読み慣れたせいもあり、物語序盤からのめり込むことができました。文庫本で読んだのですが、上巻はあっという間でした。

 

最初は利枝子の章から始まり他の3人の手の内は見えませんが、最後の節子の章になると、4人の人間を内側から見終わり、外側からも考えがみてとれるので、読者には手の内と駆け引きの糸が見えるのが面白いです。

 

2度読むと利枝子の章でもほかの3人の手の内が見えるので、1回目では見えなかったものが見えたり小さな謎が解けたりします。

 

ある意味、スルメ小説ですね。読めば読むほど味が出る。

 

登場人物の中でも一番の謎・秘密を持っているのが蒔生なので、最後に語らせるのかなと思っていたら意外や意外3番目の語り手でした。

 

一番謎や秘密に縁遠い節子の章が最後にある。果たしてそれが何を意味するのか!?もう、下巻読み始まったときはワクワク最高潮。何があるのか?は読んでからのお楽しみです。

 

簡単にいってしまうと中年男女がおしゃべりしながら森の中を歩くだけの物語なのですが、

 

語り合われる話の面白さ、景色の描写の素晴らしさから、それだけの話に終わらせない魅力があります。

 

忙しない日常から非日常への旅。小説で感じてみませんか?

 

考察

「梶原憂理がこんな形で登場するとは…!」と、当時の私にとってはかなりショッキングな作品でしたが、何がショッキングだったのかは覚えていません(笑)

 

ただ、自分で書いた感想を読んで再び読みたくなったことは確かです。確か手放しちゃったんだよな…。

 

「理瀬シリーズ」の番外編的位置付けなのだと思います。本編は今どんな感じなのだろうか?結局書けずにここまで来てしまっているのだろうか?

 

調べて見ると、「薔薇の中の蛇」というのが最新作のようですが、連載が中断したこともあり完結していない様子。再び理瀬たちと対峙するときは来るのか!?