書評日:2006.7.4(火)
変身
ごく普通の生活を送っていた主人公、鳴瀬純一は、事件に巻き込まれて頭を銃で打ち抜かれてしまう。そして彼は世界初の脳移植手術を受けることとなる。手術は成功し、一命は取り留めたものの、純一は自分の性格が変わっていくことを感じ始める。医者に聞いても答えはいつも一緒。疑い始めた純一は自分で調査を開始する…。
講談社文庫 1994年
父の本棚を漁っていたら直木賞受賞作家、東野圭吾氏の本がたくさん出てきたのでこの「変身」を選んで読んでみた。
題名から察するにフランツ・カフカを意識して書かれたものかなぁと思ったのが選んだ理由。よかったら他のも読んでみよう。とひとまず手に取る。
テンポがよく、どんどん読み進めていけるのだけれど、読み進めるごとに、悲しみに突き進んでいる自分を感じました。
読めば読むほど悲しくなるのに、その先の謎を知りたくなってしまう。
謎の答えはなんとなく分かるのだけれど、謎を知って終わりではなくて知った後どうなるのかの物語の予想ができないことと、最後をどう転ばせるかが分からなかったところがあって最後まで楽しめました。
主人公、鳴瀬純一の一人称の視点で綴られる物語であるのですが、読み進めるごとにその人格が変化し、最初と最後では全く違う物語を読んだかのような文章の違いに驚きます。
しかし、その文章の変化が絶妙に緩やかなものであったので読むテンポは変わらず最後まで読み進むことができました。
僕は、変化前の純一には好感を持てたので感情移入できたのですが、変化するにつれどんどん見放したくなってきて(笑)中盤が悲しみのピークでした。
移植された臓器は生きているものなのか?死んでいるものなのか?そんなテーマがあったのかなぁ?
ドラマ化された『白夜行』にもある、どうしようもない(どうにもできない)悲しみ'が東野さんの持ち味なのでしょうか?
他の作品も読んでみたいと思います。
考察
私が初めて読んだ東野さんの作品でした。最初がこれだと最後みたいな感想を抱くのも仕方がないことだと思います。結構ハードめな話だったと記憶していますし。
その後、『あの頃ぼくらはアホでした』や、『笑シリーズ』を読んで、そうではないと気づき始めるのですが。
東野さんは作品自体が多かったので、読む作品がなくなったときにとりあえず読むような作家さんでした。ハズレが少ないので、安心して読めるんですよね。ゆえに、そこまでのファンではないのですが、たくさん作品を読んだ気がします。
ということで、本日以降から東野さんの書評が続きます。