書評日:2006.8.12(土)
流星ワゴン
何事もうまくいかなくなって死にたくなった38歳の父親「永田カズオ」が、5年前に交通事故で亡くなってしまった父子と、オデッセイに乗って夜道を駆ける。目的地は過去の人生の岐路。新たに知る事実、繰り返される過去。そしてカズオは自分と同い年の頃の父親に出会い…。果たしてカズオには何ができるのか?過去は変えられるのか?
主に親子問題、少年犯罪などの社会問題をテーマに小説・評論を書く重松清さんの作品。「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた作品です。
主人公「永田カズオ」の視点から物語が語られ、作中では僕と自分のことを呼び、相手に対しては「○○さん」、「●●くん」と敬称を使う。
文章が、丁寧で優しい印象を持つので、学生向けなのかなぁと思っていたらとんでもない。大人向けの本です。「永田カズオ」は話し言葉が丁寧でも、38歳の父でもあり、夫でもある男なのです。買ってきたときに妹に読ませないで良かったわ。
あっさりフェイズで流れてくテンポの中に、ドロドロフェイズが急に訪れてきたりする。つかみどころのない物語。
希望に満ち満ちた物語というものでもなく絶望だらけの物語でもない、うまくバランスの取れている作品です。
最初は宮沢賢治の銀河鉄道の夜みたいな話なのかと思っていましたが、全然違いましたね。父・息子関係の物語です。
父でもあり、息子でもある主人公。団塊の世代に育てられた子供の世代の人が読めば、話に魅入るんじゃないかなぁと思われます。僕は全然違う世代なんだけど。
バランスが良いので、終わり方で崩されることはないなぁと思っておりましたが、やっぱり納得の終わり方でした。いや、それ以上か。
さわやかな読後感がやってきました。
面白かったのですが、感想が薄いんですよね。もっと年を経たらぐっと来る作品なのだと思います。
親になったら読んでみよう。
考察
これは2015年にドラマ化されたんですね。なんとなく記憶にあるようなないような…。
最後の一文の通り、親になってみたので、読みなおしてみようかな。ドロドロフェイズが怖くて読みたくない気持ちもありつつ…。