結婚することも育休をとることも夢にも思わなかったあの頃

大学時代に書いていたブログ記事をリマスター及び考察しながら載せていこうと思います。恥ずかしい思い出や今より稚拙な表現等ございますが、ご容赦ください。

オーデュボンの祈り / 伊坂幸太郎 著

書評日:2006.7.22(土)

 

 

オーデュボンの祈り

 「陽気なギャングが地球を回す」でおなじみの、伊坂幸太郎のデビュー作。コンビニ強盗に失敗して逃走した主人公の伊藤は、気づくと見知らぬ島にいた。島の名は「荻島」。そこでは未来の見える喋るカカシが島の人々の心の支えとなっていた。

 

本の裏表紙を見て、買ってしまった本。喋るカカシに興味津々。詩的な表現や、言葉の繰り返しの表現、理論やカタカナ用語などが用いられ、不思議な世界に誘ってくれた。

 

村の人が総じて変というわけではないが、主人公、伊藤が出会う人々は変な人ばかり。

 

そもそも、生活してきた環境が違う人達なのだから異質さを感じるのは当然だが、出会う人々は一癖も二癖もある人間(カカシという例外はあるが)ばかり。名前は平凡なのだが、人物の濃さのためすぐに名前の区別がつけられた。

 

面白いのは初期設定。主人公は本島に戻れば捕まってしまうし、(犯した罪は軽いのだが、重大な問題がある。)荻島にいても、家は借りている?ものであるし、居場所は少ない。

 

このように、どうしようもない立場に伊藤が立たされているところから物語が始まる。起こる事件も、伊藤にはあまり関係のないものであるし、伊藤はどう行動してもいい立場なのだ。

 

そして物語なのに自由度がある。伊藤をコマにRPGゲームを進めるようなワクワク感がある。伊藤の立場で読み進めるか、客観的に読むか、村人の視点で読むか、はたまた別の視点で読むか、その選択もできる。

 

伊藤が島に来てからある事件が起こるのだが、それをどの視点で見るかによって、物語の楽しみ方が変わってくる。ハッピーエンドになるか、バッドエンドになるかも変わってくる。読者の読み方次第で、あらゆる方向に辿り着く物語。

 

作者の迷いも見られず、物語にするにふさわしい謎と伏線を携えスピードを変えずに、物語は進んでいく。デビュー作にして、ミステリーの可能性を押し開いたと言われているのは、誇示広告ではないと思えた。

  

少し難しい物語なので、読むのに時間はかかったが、この物語を読むのに長い時間をかけられてよかった。大きく裏切られる展開というものはないけれど、切れ味がいい展開を見せてくれるので、飽きない。

 

伊坂氏は、あらゆる物語に登場するような展開を裏切りたかったのではないだろうか。どれだけおかしな人物を持ってきても、定説通りに歩かせていなかった。

 

難しい物語を読みたいときにはオススメです。

 

考察

読んだのが大分前なので、どんな物語だったかすら忘れてしまいました。慣れなかったからなのか、読むのに大分時間がかかりましたし、積極的にオススメしたかったかと問われれば、そんなこともない作品だった気もします。久しぶりにちゃんと読んでみようかな。処分しちゃったから買うところから始めないと…。

 

それにしても、最初の紹介で「陽気なギャングの…」と書いているのがいかにも田路らしいですね。今の代表作と言ったら何になるのでしょうか?やっぱり「ゴールデンスランバー」なのかな?