書評日:2006.8.8(火)
同級生
主人公、西原は野球部に所属する高校生3年生。ある日、同級生の宮前由紀子が亡くなった。噂によると、彼女は子供を宿していたという。心当たりのある西原は事故について調べ、自分が子供の父親であることを周囲に告白する。西原は勇気のある行動だと讃えられ、一躍学校内の時の人になるが…。
東野圭吾の学園モノを読むのは本作で2作目。デビューしてから数年は東野氏は学園モノ作家と認知されていたそうです。いまとなってはそんな印象は無いですけど。
『放課後』とこの同級生を読む限りだと、学園モノばかり書いてても売れなかっただろうなぁ。
とにかくこの物語は教師がまさに狂師のごとく書かれており、作者が「教師」という職業をかなり嫌っていると言うことがありありと伝わってきます。好きではなかった今は亡き女性に、子供を身籠もらせてしまった主人公の心情はとてもうまく書けていたと思うのですが、登場する教師のあまりの酷さがちょっぴり現実離れしすぎていて、読んでて辛かったです、紙の上の人物になってしまった感があって。
そりゃ、おかしな教師もいます。生徒を子供として見下してちゃんと扱わなかったり、自分さえ良ければと思って楽ばっかりしてたり、必要以上にしつこかったり。
それでも、教師達は人間なのです。その行動にも根拠や裏づけがあってプライベートもあって、学校以外の人間関係があって…。それがキャラクターを作る上で欠けていて憎むべく存在で完結しているのです。
事件の真相も、あまりいいものではなかったです。読んで損したとは思わないし、物語としても面白かったのですが、必然性が感じられないんです。事件のつながりが、ただの馬鹿としか思えない。ここに出てくる本当に教師、狂ってますから。
そして、ラストもキザっぽく。80年代のドラマのようでした。思わず吹き出してしまいました。
生徒側の登場人物はうまくできていたのに教師側の非現実的な振る舞いにギャップがありすぎて話が浮いてしまったのが残念でした。東野作品の読みやすさとテンポの良さは変わらなかっただけに…残念です。
悲しい話ではあるのだけれど泣くに泣けないし、辛いところもあるのに読んでる気持ちは宙ぶらりん。
ただ、ドラマにしてみると面白いと思いますよ。
考察
教師の描写が酷かったという印象のみで、中身を全然覚えていない物語です。教師も人によって全然印象違いますよね。嫌な教師にしか当たらなかった人もいれば、人生の師と仰ぐような教師と巡り合う人もいる。
教師に限らず、上司もそうだなと仕事を始めてから思いましたが…。いや、人間関係全般に言えるのか。