結婚することも育休をとることも夢にも思わなかったあの頃

大学時代に書いていたブログ記事をリマスター及び考察しながら載せていこうと思います。恥ずかしい思い出や今より稚拙な表現等ございますが、ご容赦ください。

となり町戦争。映画版は三崎亜記ワールドの一端としてではなく、独立したものとして見るもの。

レビュー日:2007.12.24(月)

 

「となり町と戦争をします」突然見た新聞欄の1文。実感無く進む戦争。偵察役に任命された旅行会社員と役所の職員を中心に描いたとなり町同士の戦争。

 

 

となり町戦争

論理に対して論理で説明を付けて、それをつぎはぎした結果、様々な手続きに、時間や手間がかかってしまう。それが、戦争だった場合は?

 

原作は突飛な設定を突飛なまま終わらせず、しっかりとした説明を付けて、お役所仕事の存在意義、そしてその役割、その存在意義と役割に対する疑問を上手く描けていた作品でした。

 

映画版

映画版は原作の冷たい世界と、シュールな笑いは存在するのですが、その存在が自分の認識と違う感じ。

 

同じ作品を読んで、皆が「冷たい」と感じても、その「冷たい」感覚は読者ひとりひとり、その冷たさは違うわけで。映像化されるとその「冷たい」のふり幅が狭まるんだよね。本作は、絞られた「冷たい」に自分の感じた「冷たい」感覚がカットされちゃった感じ。

 

だから最初から最後まで、違和感を持ちつつ、見てました。

 

悪くはないと思うんだけど、より、リアルさがなくなってしまった印象でした。そして、原作では説明がついたことが、余計な演出が多くて矛盾を孕みすぎてしまった感じ。

 

特にラストは全部を台無しにしていました。あれはないだろう。。

 

考察

私は三崎亜記氏の作品が好きで、その殆どを読んできました。この作品はタイトルからして突飛な印象でしたけど、その後の作品を読んでいくと、「そういうものなのだ」と納得させられてしまうというか、構築された世界の理が一貫していることが分かりました。この作品だけが異端なわけではなく、三崎亜記ワールド自体が異端なのだと。

 

ゆえに、読書をしながらパラレルワールドを旅している気分になれるのでとても好きな作家さんの一人です。

 

 

映画化は三崎亜記ワールドとはまた違う世界だと思って見るとよいのでしょう。タイトルフレーズがよかったから映画化しただけみたいな印象があって、原作ファンとしては楽しめなかったです。ラストのひどさは本当によく覚えています。