レビュー日:2005.5.25(水)
Wallpaper For the Soul
フランスのバンド、tahiti80のセカンドアルバム。先行シングル「1000times」「soul deep」を含む全12曲(ボーナストラックを除く)。前作と違う面を全面に打ち出した実験作。
1stから3年経ち(1stは2002年発売)、待ちわびたファンも多いはず(3rdまでにはまた3年かかるんですが…)。ちなみにフランスのバンドながら英語で歌います。
この2ndはあまり好評でないんですよね、なぜか。今まで3枚出てますけど(2005年現在)、僕は一番このアルバムが好きですがね。実験作はどのバンドでも賛否両論が飛び交うということなのでしょうか。
今作では持ち前のポップさを消し去らずに、前作のギター・ポップ/ロックに加え、ソウルやブラックミュージックなどを取り入れ、モダンなサウンドに昇華し、自らのサウンドを創り出している。
僕はtahiti80をこのアルバムから知りました。これが発売したときは受験期だったのですが、勉強に集中できずに音楽ばかり聴いてました。そんな時、友達がtahiti80のアルバム発売日が楽しみで夜も眠れないとか言ってて、僕が誰それ?と聞いたら「お前はtahiti80の存在もしらんのか!」と怒られました(笑)
そしてその友達が、このアルバムが発売してから2日後ぐらいに貸してくれたんです。出たばっかりなのにいいの?って聞いたら「とにかく聴け」と言われました。そして、1曲目を聴いてみたら、なんだか変な感じがして、友達はこんなのが好きなのか?と少々馬鹿にしてたんです。
でも、2曲目が全然違う曲で、また次も違くて…。万華鏡みたいなサウンドだなぁって思って気づいたらすっかりはまってしまい、ずっとリピートしていました。
Wallpaper for the Soul
お気に入りLv6
不思議な曲ですよね。音が今まで聴いてた音楽と全く違うんで、戸惑いましたが悪い曲じゃないと思いました。何回か聴いてからそう思いはじめたんですが…。
熱い石に雫をたらした蒸発音みたいな音にノイズが混じって、不思議な音世界が演出されています。そこに音がどんどん加わっていって、焦燥に駆られてる訳じゃないんだけど時計の針がぐるぐる周り出す感じで終わっていく。ヴォーカルの声も耳になじんでいく。
それでも???という思いがありました。このアルバムはこんな音楽がずっと続くのか?ヒーリングミュージックなのか?と思っていたら次の曲が違う感じで。
歌詞は魂の壁紙を繰り返してる。そこにとらわれずに世界を構築していこうという壮大な感じにもとれるし、全てはそこに還るという世界の構図を歌っているようにも感じます。
1000times
お気に入りLv7
始まり方がドラマチックです。なんか日本のチープなドラマとか思い出しました。サウンドが今までの感じと違うから、新境地を開拓した印象を受けます。サウンドを詰め込むって概念なのでしょうか。重ねるのだけがアレンジだと思ってたんだけど、詰め込むっていうのもあるんですね。
ここまで詰め込んで重くならないのは不思議。多分皆、重くなりすぎることを嫌って詰め込みすぎることを嫌うんだろうけど、タヒチは消化しちゃったのかな。
歌詞はとっても前向きで、まあ題名通りでしょうね(笑)1000回でもやる。1000回だってって。1000回…。101回目よりはるかに多い。
The Other Side
お気に入りLv6
朝・ドラマティック・森(わけわからん)なイメージ。間をとりつつ、きれいに伸びるヴォーカルが素敵すぎます。それでいて、ノれるグルーヴみたいなのがある。サウンドに注目してみると、次から次へといろんな音が出てくる。この曲だけではないけれど。一度終わったようになるんだけど、また戻ってくるときが鳥肌モノです。
歌詞は題名通り。
Separate Ways
お気に入りLv8
朝食をとりながら新聞読んでる感じ。天気は晴れ。アコースティックサウンドとシンセサウンドとの融合。とにかく聴きやすくて何度でもリピートできちゃいます。この曲でtahiti80にメロメロになりました。タヒチ様あなたの虜でございますると。
でも歌詞は何か微妙にドロドロ?してるというか、気づいておくれって言ってる。曲調はこんなにさわやかなのに、意外でした。
Get yourself together
お気に入りLv7
エレクトリックギターの音の粗さと心地よさ、そのいいとこ取りをしたのがこの曲でありましょう。何より光ってるのはギターの音、嫌なノイズレス。おとぎの国のようなテーマパークでコーヒーカップで回ってる感じ。
あーあーあーきっと大丈夫
Happy end
お気に入りLv7
ハッピーエンドという割には悲しく始まる曲。ふたりは違うって分かってるだから違うなりに分かり合おうってことなのかな。シンプルなサウンドにと雰囲気を醸し出すパーカションの音と、感情を表現できる歌唱力がこの曲のポイントです。
最後はタダでは終わらない感じ。
fun fair
お気に入りLv7
ブラスの音をフィーチャーした楽曲。メロでの遊園地プラズマティックなサウンドとサビの動きのある音との対比がとても面白い。
サイケ的な音の繰り返しが訪れて、また聴いたことのないサウンドがやってきて、通り過ぎていく。歌詞はなんか恐いです。
Soul Deep
お気に入りLv9
これはすごぉくいい!イントロのギターの音変化から鳥肌立ちっぱなし。こんなポップな曲が急に目の前にやってきたら嬉しくって仕方ないでしょう。友よありがとう!
曲はあっという間に終わっちゃうんだけど、幸せな気分にさせてくれる。素晴らしいサウンドと、バンド音と素敵なハーモニーの織りなす魂深層世界。
タヒチのポップセンスを最大限に引き出したプロデューサーに感謝。そしてこの音を出せるタヒチを尊敬!
時間を無駄にしちゃいけないですね、ホント君には熱い魂があるっていわれてたら。
Open Book
お気に入りLv7
ちょっと聴いてると悲しくなってくるかも知れない。でも音で心の中に響かせてくれるサウンドってなかなかない。どこか落ち着いていて、でも悲しさをこらえきれてないみたいな。途中のパートで聴かせるメロディーで涙できます。
開かれた本は僕の方に向いてる?僕はそっちを見てる?
The train
お気に入りLv8
この曲は北海道を電車で旅行中にずっと聴いてました。ここで聴かずにいつ聴くのさ?って思っていたのです。もう、大好きなんですね。たまらないじゃないですか、旅行中の気分ってとまらないじゃないですか、ウキウキな気分って。
電車に揺られながら、ずっとリピート再生で聴いてたら、一つ一つの音が僕と話をしてる感じがしたりして。脳内共有。そんな素敵な気分をいつまでも持たせてくれるのがこの曲です。
でも歌詞はすがすがしさだけではないんですよね。
Don't Look Below
お気に入りLv7
アルバムはとうとうラスト一個手前まで来てしまいました。タヒチにハマってしまった人は「もう少しこのアルバムの世界に浸っていたかったのにな」と思うはず。ここからの2曲はそんな人に、「また来てよ」って呼びかけるような映画みたいに素晴らしいものです。
サウンドを詰め込んでいるんだけど、音が無機質にならずに優しく、美しく、暖かみがあるのがすごいところ。
人に何か言われても下を向いてはいけないよ。グザヴィエさんの書く歌詞はいつもやさしい。
Memories of the Past
お気に入りLv9
暖かさの代表形。この曲の暖かさは飛び抜けていますね。暖かい家庭環境をそこに見いだすような。夕食のスープで心まで温まるほど暖かいような。
いやなこともいいこともなぜだかいい思い出になる、いったん過ぎ去ってしまえば。
この曲はとにかくすごい。バラード好きは聴いて損はないと思います。初めてこれを聴いてしまった時といったら…。聴き終えた後、しばらく何もできませんでしたよ。
総評
改めて聴き直してもすごくいいアルバムです。ポップミュージックならではの音から「あ、こんな音も使ってるんだ」って音まで発見するのも楽しい。
初めてtahiti80を聴いたときの「こんな音楽もあるんだ」と目を輝かせてたあのころが懐かしいです。あと、初回盤に限り、アルバムジャケットは4パターンあるんです。購入するとき、どにするかを迷いました。
「ポップよりロックの方がいい!だってポップはださいんだもの」と思っている方に是非おすすめしたいです。そんじょそこらのロックじゃ敵わないと思うんです。いや、ほんと聴いて損は無かろうと思います。
ちなみに日本盤ボーナストラックはアルバムから浮いていたのでレビューはしていません。あまり好きではないし。
考察
私が最初期に書いた「音楽CDレビュー」です。ブログを始めたときの物凄い熱量を感じます。何を言ってるのか分からない表現もありますし、文章もつながりがよく分かりませんでした(文脈がつながらないところに関しては、修正できるところは修正していますが、何を言いたいか分からなかったところは直せませんでした。)
ただ、今、レビューしろと言われても熱量が無さ過ぎて書けませんから、若さと情熱ほど素晴らしいものは無いのだなと思います。
tahiti80は私に「洋楽を聴く」という抵抗を無くしてくれたアーティストなのだと思います。彼らの曲を聴いてから、様々な洋楽を聴くようになりましたし、邦楽・洋楽問わず、どちらも「音楽を聴く」という認識に変えてくれました(それまでは自分の中で「邦楽を聴く」「洋楽を聴く」は別々のものとして扱っていた。)。
今でも時々聴くぐらい好きなアーティストですし、これからも聴き続けたいアーティストでもあります。