レビュー日:2006.9.12(火)
NIKKI
現時点(2006年時点)での最高傑作と称されるくるりの2005年発表の6枚目。シングルBirthday、Superstar、赤い電車、Baby I Love Youを含む全13曲。
くるりのアルバムを聴くのはこれが初めてで、聴くきっかけは「60年代UKロック好きは聴くべき」と何かで見たことに起因します。くるりは「変態+ポップ」な脱力系バンドだったのか!?とamazonの解説を見て驚きました。
全体的にサクッとしています。軽い空気感が漂っていて、あっさりと全曲通して聴くことができました。あまりにもあっさりしすぎているので、何度もリピートしてしまうほどです。
何度聴いてもあっさりしているのですが、不思議なのは薄っぺらさを感じないところです。あっさりしている曲とは、えてしてその薄さに落胆させられるものでありますが、このアルバムにはそれがないのです。
かといって濃厚さを感じるわけでもない、不思議なアルバムです。味の濃さを出すために生地を何層も何層も重ねたら、思惑に反してにしっとりしたケーキができあがってしまったケーキ職人の驚きを、作品を手に取った人に味わってもらおうとしたかのよう。このあっさり加減は狙っているんだろうな。
曲について
気になった曲について触れていきます。
Bus to Finsbury
1曲目のこの曲は、サウンド的には初期ストーンズっぽいんだけど「ザ・フー」のことを散りばめた歌詞で思わず笑ってしまった。「I'm a Boy」に「Who are You」に(てかフーフフも一緒かよ!!)遊び心感じる一曲。
Baby I Love You
インタビューで、「くるり」らしくない曲をつくろうとしたようなことを岸田さんが言っていて、それでも素の裏の裏をかいたら、そんじょそこらのインチキラブソングよりを遙かに凌ぐ曲になったとか。この曲を2曲目に持ってくるのがすごい。
Ring Ring Ring!
キンクスの「You really got me」のリフを使ってる曲。隠さないのが確信犯的。ザ・フーもこの曲を「I Can't Expain」で使ってるし (これも真似したことを堂々と公表してる。)色々な曲の元にされるリフなんですね。
(It's Only) R'n R Workshop!
ストーンズの曲の題名を捩り、ゾンビーズ的なメロディアプローチをした曲。コレでアルバムをしめられ、また「Bus to Finsbury」ではじまると永遠ループの完成。
総評
色々な要素を堂々と使っているので、聴いてて楽しくなります。シングル曲も非常に聴きやすく、音の良いとってもイイアルバムだと思います。60年代UKロック好きは聴いて見るべし!
考察
これを聴くと当時のことや悲喜こもごもが思い出されます。甘酸っぱいような、切ないような…、そんなアルバムじゃないんですけどね。
このアルバムが良かったので、前評判が良かった次作の「ワルツを踊れ」を買ったのですが、ピンと来ず、過去作も借りたのですが、結局くるりにはハマれませんでした。
1曲1曲は良いなと思うのですが、アルバムトータルで聴くと「もういいかな」と思ってしまうんですよね。好きな曲もいくつかあるんですけど。
オマージュモノって、最初に聴くと良いなと思うんですけど、よっぽど出来がよくないと、段々と元ネタを聴いた方がいいなと思えてきてしまうんですよね。悲しいことに。
トリビュートアルバムなどのカバーも似たようなもので、「やっぱり原曲がいいな」と思って戻ってしまうことがよくあります。