北村薫
北村薫さんの著作を読んでいた時の記事と、直木賞を受賞されたときの感想記事を合わせてご紹介いたします。
「水に眠る」を読みながら
2005.3.28(月)
北村薫氏の「水に眠る」を書店で購入し読んでおりました。椅子に座って、お茶を入れて優雅な読書タイム。
この人はなんて不思議で暖かい文章を書くんだろう。各短編に色が着いている印象を受けます。一貫とした色と変化する色とを巧みに絡ませているような。
ターン
彼の文章の虜になったのは、北村薫氏の「時と人の3部作」の2作目「ターン」からでした。父の書棚に「ターン」の文庫本が積みあがっているのを見て、読み終わったタイミングを見計らい、拝借いたしました。何故この本が気になったかと言えば、表紙の絵に惹かれたからです。
CDでいえば「ジャケット買い(買ってないんだけど)」にあたる衝動でした。「この本よみたい」という純粋な衝動。
「ターン」は長編なんだけど、長編を読んでいるときに感じてしまう「だるさ」がなくて、すらすらと読めました。読んでいるときは透明なんだけど、そのバックグラウンドの色が文の区切り区切りで垣間見えてくるんです。この感触は北村さん特有のものだと思います。
祝!直木賞受賞
2009.7.16(木)
北村薫さんが、「鷺と雪」で第141回直木賞を受賞されました。おめでとうございます。
最近、北村さんの作品を再読していたのですが、今朝テレビをつけたらこのニュースが目に飛び込み、とても嬉しくなりました。
北村さんの作品は本筋がしっかりしているのに加えて、ふとしたディテールの描写に「はっと」させられることが多く、要約して語る物語では表せない面白さを持っています。
構想、発想は難解なものではないのですが、登場人物の心の揺らぎや、風景の描写が心のうちに染み入り、読者があたかもその場面に居合わせたり、その場所を歩いてたりするかのようにさせてくれる読書感を与えてくれるのです。
北村さんの作品との出会いは、確か中2の夏休みのことでした。読書感想文を書くために何か面白そうな作品がないかと、父の書棚を漁っていたら、文庫版「ターン」を発見したのです。これは、「時と人の3部作」の第2作にあたる物語でした。文庫本の表紙と、あらすじのSF的な物語の発想に惹かれ、この作品を手にしたのでした。
当時から読書は好きでしたが、毎日読むほどではなく、年に数冊しか読まなかったのですが、この作品と出会い、北村薫という作家の存在を知り、本の面白さに触れてからというもの、年々読書量が増加していきました。
あれから10年。北村さんの作品を何度読み直したことでしょう。読み直しても読み直しても、作品は色あせるどころか色彩を帯び、新たな出会いを私に提供してくれるのです。
好きな作家さんは数多くいれど、やはり北村さんはその中でも特別な存在なのです。
考察
北村薫さんは今でも好きな作家さんの一人です。「ターン」は同じ世界を繰り返す作品で、ともすれば退屈な事象の繰り返しに終始しそうな題材でしたが、あっという間に引き込まれて気づけば読了していました。中学2年であのページ数を飽きずに読み通せるって、かなり引き込む力があるということですよね。
近年も何度か読み返していますが、直木賞受賞作の「ベッキーさんシリーズ」は、歴史背景も理解しなくてはいけないため、少々難解でした。読む度に以前は殆ど分かっていなかったと思えるぐらい、新たな気づきに驚かされるのです(それはどちらかといえば「悲しさ」に気づくので、段々と読み返すのが辛くなってくるのですが…)。
復職したら、通勤時間に読む予定の「太宰治の辞書」が楽しみです。