レビュー日:2006.8.17(木)
リビング
1995年「冬のうた」でメジャーデビュー。今日に至るまで、精力的な活動を続けているカスタネッツの1stミニアルバム当時としては珍しい4枚のマキシシングルの曲を含む全8曲。優しさと丁寧さと切なさが調和しているアルバム。
格安で手に入ったので久しぶりに聴いてみた。カスタネッツとの出会いは2000年。レンタルCDショップで目について衝動借りしたんだっけ。今思えば、よくあったなぁと思う。セールス的に成功しているバンドじゃなかったし、ビジュアル系全盛の中、地味系でルックスも冴えなかったし。
おそらく、デビューからファーストアルバムに至るまではかなり期待されていたんだと思う。スピッツみたいになれるぐらいの期待(顔が悪くても曲がいいから売れるかなー?って感じ。)。
アルバムに収録されているシングルは4枚とも、初回版アリのマキシシングル。8cmシングル全盛の1995年当時でマキシシングル。当時はシングルと言えばカラオケトラックも入っていたのに、彼らは入れていなかった。パイオニアだね。
そうして、このミニアルバム「リビング」発売に至ったのだけど、何でミニアルバムだったのだろう?シングルは4枚も出していたし、マキシシングルで話題も集めていたし、レコード会社、事務所的にもセールスを見込ませれば、フルアルバムにしないほうがおかしい状況だと思うのだけれど。
この後、カスタネッツはミニアルバムを3枚続けて出す。ミニアルバムは成功しないという業界のセオリーをうち破ろうとでもしたのだろうか?
そうして失敗した。
フルアルバムを出したのは漸く3枚のミニアルバムを出した後、事務所からクビを切られる寸前のことだ。
個性を尊重する風潮の中、同じようなバンドやグループが浮き沈みする矛盾する業界で、曲・歌詞・センス、それぞれに特異なものを持ちながら、セールスに恵まれなかったカスタネッツはメジャーシーンから姿を消すことになる。
と、解散したかのように話してきましたが、まだ彼らは活動してるんです。リズム隊の2人抜けちゃったけど、下北沢で定期的にライブをやっているそうです。予定が合ったら見に行こうかしら。
改めて聴いてみて
牧野氏の声はやっぱり染みいる。荒削りで切ない歌声。ロックを奏でるフリして腰のない演歌を歌う、そんじょそこらのバンドのボーカルとは違うよね。
演奏も決して上手いとは言えないけれど、色々試してみてるし、各パート事に聴いてると面白い。それぞれのパートが別メロディを奏でている感じ。ギターフレーズとボーカルラインが他のことやってるんだけど、きちんと調和している。
お気に入り曲目
ここで気に入っている曲の感想を。
どうせ明日も晴れだろう
1曲目。カスタネッツらしさが全面に出ている曲。彼らの曲全般(例外もあるけどね)に感じるのは、口ずさんでも恥ずかしくないメロディを持ってるってこと。古くさくなく、口ずさみやすく。
愛だ恋だのダサく歌い上げる歌詞とは違う。内から感じる切ない歌詞が並びます。
僕はそれがとても不思議だった
サビとメロの起伏があまりない。けれどもそれが切なさを増幅させる曲。今聴くとこの曲が一番いいかもしれない。前は何でこの曲をシングルにしたのか分からなかったけど。
ユニゾンボーカルでトリハダ。ギターメロディが面白い。
冬のうた
デビューシングル。シンプルにまとめてある曲。切なさが走ってる。友人とのセッションでも演奏する曲。思い入れのある曲。
総評
CDショップで格安で見かけたら買ってみてください。(実は僕は380円で手に入れました)。彼らの作品はとても優しくしみこんできます。一度は耳にして欲しい、そんなバンド。
考察
カスタネッツは自身の信条を曲げなかったのかもしれないと、今日に至るまでリリースされた作品を聴いてきて思いました。売れない可能性が高くても、確実に自分たちらしさが出る「ミニアルバム」という形態にこだわったのだと。
カスタネッツのミニアルバムはどれも毛色が違くて、それでいてどれもカスタネッツで、なんというのだろうか、もうカスタネッツとしか言いようがないアルバムばかりなんです。その分、フルアルバム(2枚)は間延びしてる印象を受けてしまう。
ファーストミニアルバムのこの「リビング」は、耳障りはいいが、右から左へと流れていく、今の音楽とは一線を画している気がする。下手でもすごくいいのだ。カスタネッツなのだ。